山神様にお願い
その直後、店長が、あ!と言ったのだ。
悪い、シカって。俺今日、オーナーのところに行かなきゃならないんだった、って。
だから私はいいですよ~って言った。凄く観たい映画があったわけではないし、前の晩は例に漏れず店長とアレコレがあったので、全身が非常にだるかったし部屋で眠りたかった。
それで街中で別れたことがあったのだ。
・・・・・あの日?あの日に、阪上君が現れていた?・・・全然気付かなかった。
「シカが帰って、つけてきたヤツも消えようとした。だから、捕まえたんだ。君が鹿倉ひばりの元生徒君?って聞くと、胡散臭そうな顔して、だったら何?って言った。だから、ちょっとおいでって人気のない場所まで連れて行ったんだ」
「ついて行ったんですか?あの阪上君が?」
凄く慎重なあの子が、知らない男性に呼ばれて簡単についていくとは思えなかった。私がそう言うと、店長は違う違う、と首を振る。
「だから、あの子は本当にシカが好きだったんだよ。その彼女の彼氏らしい。何か弱みを握れたら、そう考えたか、その時からその話し合いのことをシカにチクって俺の印象を悪く出来るかもって考えてたんじゃないの~?」
はあ!成る程。私は思わず頷いてしまった。それなら判る。物凄く阪上君っぽい行動だわ、って。
「柄の悪そうな男の人たちって言ってましたけど・・・」
私が言うと、彼は、ああ、それはほら、と指を振った。
「秋に龍さんと山神で暴れたバカ共だよ。別の形で落とし前はつけてもらうって言ってただろ?俺が呼び出して、あの子を脅す舞台設定をつくるために壁になって貰ったんだよ。学芸際なんかであるだろ?木その①とか村人その②とか、そんな感じだ」