山神様にお願い
「そうですよ。妹は飛ぶ鳥の、飛鳥と言います。うちのお父さんの趣味なんですよ、バードウォッチング」
『そうなのか!お父さんとは話が合いそうだなあ!』
・・・話す機会があれば、ですけどね。こう心の中で呟いた。
既に私の中では不安とかよく判らない気持ちが消えていた。電話で話しながら笑顔になっていて、それに自分で気付いてしまったからだった。
「明日には・・・帰りますね」
『うん、俺も明日には帰る~。年も明けたし、やらなきゃならないことが山積みだろ?何か手伝えることあったらやるよ~』
え?私は首を傾げる。やらなきゃならないこと?・・・ううんと、何だろう。私、何かやらなきゃならないことってあったっけ?
「え、店長が何いってるのかちょっと判りません」
考えたけどすぐに放棄して、そういった。すると電話の向こうから聞こえてきた愛しい声はこう言ったのだ。
『新しい部屋探さなきゃならないんじゃないの~?』
って。
私はケータイを握り締めたままで目が点になった。
・・・え?ええ!?どどどど、どうして私が引っ越すってこと知ってるんだろ、店長は!?
「えっ・・・あの・・・・あれ?ひ、引越しって、何で・・・」
知らない間にぎゅうっとケータイを握り締めていて、指が白く染まる。実に何でもないことのようにあちら側では店長がアッサリと言った。
『え?だって今の部屋から通うには、会社遠いだろー?』
私は、愕然とした。