山神様にお願い


 夕波店長が大げさに肩を落とした。それを笑って見ながら龍さんが続けた。

「シカがくるってことも、山神様のお告げなんだってよ。バイト募集する前にいつもこいつが聞くんだよ、山神様に」

「え、私がくるって言ったんですか?」

 それだったら凄いぞ!そう思って身を乗り出すと、店長が苦笑する。

「いやいや、ハッキリと、鹿倉という女性が、なんていわないんだよ。でも次にバイトの求人だせば、来るのは女の子で、大学生だって知ってたね」

「わお!本当ですか?」

 私は目を丸くする。そいつは仰天だぞ、そう思って。すると店長は大きな口を吊り上げてにやりと笑った。かなり嬉しそうな顔で。

「嘘」

「―――――――え?」

「嘘に決まってるでしょー、俺にそんな力なんてないよ。龍さんが面白がって話を大きくしてるだけ。俺はただ単に、自分が好きで山神様って信じてるんだ」

 あははは~と笑う店長の横で、龍さんがカウンターを叩いて喜んでいる。私の隣ではツルさんが大爆笑中。

「シカちゃんたら純粋~!!」

 なんだ・・・。私は思わずテーブルに額をぶつける。くそ、一瞬信じかけたではないの!

 ゲラゲラと笑いながら龍さんが言った。

「信じるか、普通!?お前、バカだなああああ~!」

「・・・右田さん」


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