山神様にお願い


 ・・・何なんだ、この反応は?俺は皿を洗う手を止めて、笑う上司二人をじっと観察した。えらく楽しそうな嬉しそうな顔をしている・・・。

「あの子、サイコーだぜ。超面白いの」

「そうなんだよ、ウマ。なんつーか反応が秀逸。あれはSっ気刺激されるよな~」

「リュウさんが苛めすぎたら仕事にこなくなるから、やめてね」

「は?そりゃお前にだけは言われたくねーセリフだぞ、トラ」

 理解した。どうやら噂の新人さんは、この両苛めっ子のからかいの標的になってしまっているらしい。・・・ああ、可哀想だ。不憫だ。残念すぎる。

 俺は皿を洗いながらついため息を零す。するとそれを耳ざとく拾ったリュウさんが、カウンターの向こうから顔をぬっと突き出してきた。

「こらウマ、何だよそのため息~」

「いや、可哀想だなあって思って。だってトラさんにもリュウさんにもからかわれるなんて・・・最悪」

 肩を竦めてみせると、キャッシャーを終わらせたトラさんがビールを持ちながら参戦した。

「お前、仮にも上司にむかってその口はなんだよー。時給下げるぞコラ。こーんなに、俺は優しいぞ?」

「優しいってのは自分で言うことじゃないですよ。セクハラとかパワハラとか、そんなことにならないようにして下さいよ、二人とも。ツルさんに怒られますよ」

 俺の意見にふん、と鼻を鳴らして、リュウさんが言った。


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