山神様にお願い


 シカさんの失恋パーティーなるものをしに、彼女の友達が集まって山神へとやってきたのだ。そして華やかな女子大生の一団を見て一瞬で身支度を整えたトラさんと、苛めっ子を封印したらしいリュウさんの完璧なもてなしによって、シカさんとその3人の女友達は全員が酔っ払い状態になってしまった。

 リュウさんの本性を見せようとしたシカさん相手にリュウさんが脅しをかけた時には、俺に火の粉が降りかかってきたのだ!

 包丁を握ったリュウさんが、にっこり笑ってこう言った。

『シカ、馬刺しはどうだ?』

 って。この店のメニューに馬刺しはない。だけどこの店には「馬」はいる。つまり、俺だ。

 真っ青になって首をぶんぶん振りまくったら、仰天した顔のシカさんが頷いてくれて本気で助かったのだった。ツルさんがやってきて俺の肩をポンと叩いた。

『お疲れ、ウマ君。バイトで命かけてられないわよねえ~』

 だけど俺は知っている。実は、ツルさんだって楽しんでいたってことを。

 とにかく、女子大生3人と店長、板さんが楽しく盛り上がっているのを横目に、俺とツルさんは御飯をちゃっかりと頂戴しながらシカさんを慰めていた。

 シカさんはあまり酒には強くないらしい。すぐに酔っ払って、さっきまでツルさんの膝枕で寝転がっていた。

 女子大生が店長に「シカを慰めてあげたいんです~」と言ったことから出た海へ行こう計画、他の仕事が入っているツルさんは無言で携帯を操って休みを変わってもらったらしいし、俺が大学があるのだけれど、それもトラさんの命令で自主休校になった。

「ウマ、判ってるよね?」

 ってトラさんがニッコリ笑うんだもん!あの細目を、更に細めて!


< 370 / 431 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop