山神様にお願い


 ぼんやり、のほほんとした口調で、トラさんがたら~っと言った。

「そうやってツルはリュウさんを教育してたんだな~。・・・なるほど。でも俺を出すんなら、名前使用料払ってくれないと~」

 うんうんと頷いている。

 私は呆れてトラさんに向き直った。

「教育は本来、店長の仕事であると思うんですけどね?」

「え、そうなのー?初めて知ったぜー」

「俺もー、初めて知った~」

 トラさんの軽口にあわせて、カウンターの中でリュウさんがくねくねと腰を揺らす。何なのだ、こいつらは!

 私が半眼でため息をついていると、寝起きのトラさんがカウンターに近寄ってぼそぼそと言う。ねえリュウさん、俺お腹空いた、って。お腹すいて眠れなかった、って。

「まかないは出しただろ?俺のスペシャルチーズオムライス」

 リュウさんが腕を組んで眉間に皺をよせそう言うと、トラさんがにっこりと笑った。

「うん。あれ最高に美味かった~。でも別腹で。森の世話してたら腹減るんだよ。何か作ってよ~リュウさーん」

 くそ、と悪態をつきながら、それでもいそいそと料理を始めるリュウさん。私はもう完全にあきれ返ってもう一度ため息をついた。

 ・・・まったく、この人達ときたら!


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