山神様にお願い
俺はそれがちょっと不満だ。
幸せな夫婦、そんなものは幻だと思っていた俺に、こんな生活や関係もあるのかと思わせてくれた二人だった。
二人には仲良くしていつまでも一緒にいて欲しい。それは今まで彼女が出来ても続かない俺が、どんなに憧れても自分では手が届きそうにない幸福の形─────────
「洋風がいい?それとも和風?」
聞きながら、俺はパプリカを刻んでいく。これを焼いたナスの上に散らして餡かけにしたらどうだろうか?パセリに、鷹の爪もいいかも・・・。
包丁の音をたてていたら考さんの笑い声がした。
すでにミクさんと今日あったことを話しているんだと判った。
俺はちょっと笑ってまな板に視線を落とす。
二人の邪魔はしたくない。
手元に集中した。ナスの味を舌の上に再現させて、眉間に皺を寄せて考え込む。冷蔵庫にあるもの。それでいて、日本を感じそうで酒にも合って、一品で満足するほどの濃さ。うーん・・・チーズ。チーズならかなり濃さを足せる。それに食感が頼りないから、何か・・・・。
勝手知ったる冷蔵庫をあさって、使えそうなものを目の前に並べる。
田楽・・・そうか、味噌か。日本っぽい。それに・・・・チーズ?ならここで肉を足す?それか魚・・・更に野菜ではちょっとインパクトが足りない。
「あ」
一人で呟いて、俺の手は忙しく動く。