山神様にお願い
新年があけて、やたらと寒い1月4日、久しぶりに山神のメンバーが全員集まった。
大掃除をしたあとで、トラに命じられていた新メニューのお披露目だった。俺はあれからも色々試した結果、一番コストがかからずに出来るものをちゃっちゃと作り出す。
ヤツらの喜ぶ顔が、すでに判っていた。
トラがカウンターに肘をついて俺のやることを見ている。
「リュウさん、もしかしてナスですか?うわー、俺、ナスが実は苦手なんです・・・」
ウマがそういった。
「よしウマ。お前は山神のメンバーから外してやる」
俺がふんぞり返ってそういうと、やつは慌ててすみませんと謝る。トラがニヤニヤしながらかぶせて言った。
「食べてからにしろよ、ウマ。食う前から文句言うなら蹴りだすよ?」
「すんません!ありがた~く頂戴します!!」
「そうよーウマ君、子供みたいに、もう」
ツルにまで言われて半泣きのウマを、シカがさりげなくフォローしていた。
「よし、出来た!おめーら有り難く食って美味さに悶絶しやがれ!」
結果はわかってる。いつだって奴らは嬉しそうに俺の料理を食べてくれる。だけど、この瞬間、ああ料理人になってよかったなって俺は思うんだ。
ほころぶ顔。
光る笑顔。
俺の、天才の証明の場面が。
・「天才の証明」終わり。