山神様にお願い


 新年があけて、やたらと寒い1月4日、久しぶりに山神のメンバーが全員集まった。

 大掃除をしたあとで、トラに命じられていた新メニューのお披露目だった。俺はあれからも色々試した結果、一番コストがかからずに出来るものをちゃっちゃと作り出す。

 ヤツらの喜ぶ顔が、すでに判っていた。

 トラがカウンターに肘をついて俺のやることを見ている。

「リュウさん、もしかしてナスですか?うわー、俺、ナスが実は苦手なんです・・・」

 ウマがそういった。

「よしウマ。お前は山神のメンバーから外してやる」

 俺がふんぞり返ってそういうと、やつは慌ててすみませんと謝る。トラがニヤニヤしながらかぶせて言った。

「食べてからにしろよ、ウマ。食う前から文句言うなら蹴りだすよ?」

「すんません!ありがた~く頂戴します!!」

「そうよーウマ君、子供みたいに、もう」

 ツルにまで言われて半泣きのウマを、シカがさりげなくフォローしていた。

「よし、出来た!おめーら有り難く食って美味さに悶絶しやがれ!」

 結果はわかってる。いつだって奴らは嬉しそうに俺の料理を食べてくれる。だけど、この瞬間、ああ料理人になってよかったなって俺は思うんだ。

 ほころぶ顔。

 光る笑顔。

 俺の、天才の証明の場面が。




・「天才の証明」終わり。
< 404 / 431 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop