山神様にお願い
夕波虎太郎15歳。
住んでいる場所の中で決められた進学先で、下から2番目にバカな高校へ進むことになった。
そこはまだ新しい学校だったけれど、来るやつが皆バカか地域のことがよく判らずに家から近いからという理由で選んでしまった転校生かで構成されていて、早々に事件が起こるような学校だった。幾人かの転校生の中には頭も良い生徒がいたけれど、彼らが残す良い行いや成績なんかがすぐに消し飛んでしまうような、多数のヤンキー達が起こす事件の方が数が多かったのだ。
俺は勿論悪い生徒の方。それも、かなり要注意と先生に思われている生徒だったと思う。
まだいきがっていた1年生の頃は、喧嘩や万引きや縄張り争いに忙しくて学校はほとんど行ってなかった。喧嘩のやり方はゲン先輩が教えてくれたし、族にも入っていたから学習もした。
だけど1年の最後あたりでもうほとんど俺に喧嘩で勝てるヤツなどいなくなり、憧れたゲン先輩が北海道へと行ってしまったこともあってヤンキー熱が冷めてきていた。
目標を失ったのだ。強烈な目標対象である、ゲン先輩を。
その時には俺をみたらヤンキーどもも避けて通ったし、元々群れるのは好きではないからこっちからも絡まない。そんなわけで、2年生の時には先生に「えらく大人しくなったなー!」と叫ばれるようになっていた。
族や群れから抜けると、女共との付き合いがなくなる。それだけがちょっとばかり苦痛ではあった。群れているころには寝る相手が不足したことなどなかったからだ。女共はわざわざ悪い男達に身を投げ出していた。まだ子供同士の薄っぺらい体でもつれ合う。あの頃は、それが普通だった。