山神様にお願い
団体から抜けるときには何故か粛清を受ける必要がある。それで半殺しの目にあって2ヶ月ほど入院したけど、俺は結構清々していたのだろう。もう、長い反抗期は終わりだ。
抱く相手がいない、それ以外は特に問題に感じなかった。俺は相変わらず山に登ったし、植物に囲まれて寝るのが好きだった。
一人でいる俺に敢えて近づいてくるヤツなんていない。
大人に色々言われるのが面倒だから、髪も黒に戻した。制服をきちっと着るってのはどうしても出来なかったけど、学校にも毎日いくようにはなったし(授業は聞いてなかったけど)教室にもいるようになった。
俺が落ち着くと平行して母親も穏やかになっていったし、片山さんも喜んだ。そして、俺にバイトをすすめた。
「こた、何かでお金を稼ぎなさい。お金っていうのはね、人様からとるよりも貰うほうが有り難味がますのよ。自分も気持ちいいの」
片山さんがそういって、俺にバイト情報紙を押し付ける。
気持ちいい?それってエッチよりも?俺はそういって茶化したけど、やることがなくて暇で、まとわりつく女もいないし、じゃあやってみる?って軽いノリで始めることにした。
とりあえず、片山さんの元旦那さんが牛耳る的屋の手伝いから。的屋なんてヤクザ者よ、と母親は嫌がったけれど、自分の財布からお金を抜き取られるよりはいいに決まっている。それに俺が普通の仕事の面接に受かるはずがない。口のきき方もしらなかったのだから。というわけで母親は、的屋で俺が働くことは、片山さんの説得で渋々頷いていた。
2年の夏には、俺は屋台でフライドポテトを揚げて売っていた。