山神様にお願い


 あの細い瞳に光を浮かべて、大きな口をにやりと歪めて。ぐっとつまって悔しさに震える私を見て、店内を楽しそうにスキップしたりするのだ。スキップだよスキップ!!

 大人の癖に。

 大人の癖に~!

 たまーに、あんな感じでツルさんが助けてくれるけど。それでも大体は、ツルさんも一緒に楽しんで笑っていた。

 私は最初怒って膨れる。だけどお客さんにまで慰められたりからかわれたりしている内に、笑えてくるのだ。

 ま、いっか。結局最後はそう思ってしまうのだった。

 だって、皆笑っているのだもの。一人で怒ってるのがバカみたいに感じるのだ。



 私は店の一番奥の壁を向く。そして山神様に両手を合わせた。

「山神様、お願いします!この店からいじめっ子をなくしてください!」

 南無南無・・・と祈っていたら、後ろで男性達がたら~っと会話しているのが聞こえてきた。

「聞いたか?今のシカのあてつけがましいお願い」

「あれ、山神さん聞いちゃったら大変だぜ」

「・・・とすると、人がいなくなるな」

「うん、誰も残らないよね、店」


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