山神様にお願い


 私に答えられることは答え、友人から聞いた情報なども伝える。すぐ先に就職活動の門が見えているウマ君は、真剣な顔で頷いていた。

「・・・おもんねー会話」

 龍さんがぶつぶついいながらつまみを食べている。

 閉店したので頭に巻いたタオルをとっていて、耳につけた3連のブルーのピアスがキラキラと光っていた。

 熱がこもる厨房の中に半日いる為に、閉店直後の龍さんは汗だくだ。

 それを熱いタオルで拭いてさっぱりした顔は、本当に爽快そうで、まるでお風呂上りのようだなあ、といつも思う私だった。

 その時のタレ目を細めた笑顔はかなり爽やかで、あらら、この人も結構なイケメンだよね、と気付くのだ。悔しいから言わないけど。

「龍さんて就活したことあった?」

 店長が全然興味なさそうにだら~っと聞く。

 龍さんは茶髪の髪をばさばさとかき回しながら首を振った。

「あるわけないでしょ、俺は職人だぜ。専門学校行ってレストランに入ったけど、それは紹介でだったから、自分では活動してねえな」

「へえー、それがどうして居酒屋に?」

 会話が耳に入ってしまった私が身を乗り出すと、龍さんはうーん、と呟いた。

「・・・ま、長くなるから省くけど、つまり、俺は自分の好きな格好がしたかったんだな」

「はい?」


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