山神様にお願い
私が首を傾げると、彼は自分の耳を指差した。その先には3連ピアス。
「これなんか、ダメだな。ちゃんとした店で仕事して認めて欲しかったら、ちゃらちゃらした格好はアウトだな」
・・・はあ、成る程。服装規定にひっかかった、ということで宜しいでしょうか。
「好きな格好がしたかったんですね、龍さん」
ウマ君が言うのに、龍さんは頷く。
「そう。だって俺はこんな格好が似合うのよ。折角格好いいのに、それを潰してどうする」
自分で言い切るところが凄いですね、私は心の中で呟いた。
「で、どうして自分の店でなくて居酒屋に就職なんですか?」
またウマ君が聞くのに、眉間に皺を寄せた龍さんはぶっきらぼうに答えた。
「日々立のおっさんに騙されたんだよ!可愛い子が店長でくるからって言うから楽しい愛欲の日々を想像して話に乗ったのに、蓋を開けてみれば野郎じゃねーかよ」
「あ、虎さん?・・・可愛い子って、オーナーそんな言い方したんですか?」
「うーん、あ、実際は、いい感じの子って言ったんだよ。でもいい感じっていったら普通は女の子だろ?」
何でそう思い込むんですか、と、私はビールを飲みながら心の中で地味に突っ込む。
「龍さんらしいですけどね・・・。虎さんは、就活経験ありますか?」
あはははと笑ったあとで、店長を探してウマ君が振り返る。
「あれ?虎さんが消えた」