山神様にお願い
うん?3人でキョロキョロする。確かに近くにいた店長の姿が消えていた。閉店後の居酒屋で、カウンターの所だけの電灯をつけて飲んでいるので、後は暗くてよく見えない。
「おや?」
さっきまでここにいたのに、店長どこ行った?
「え、まさか帰ったとかないですよね?」
私が立ち上がって奥の方を覗き込む。ウマ君は店の入口をあけて、前の道を見ていた。
一人カウンターに座ったままだった龍さんが、苦笑して立ち上がる。
「判った、きっと森だ。―――――――ほら、君たち、飲み終わったものを運びたまえ。洗って、さっさと帰るぞ、もう1時すぎてんじゃねーか」
「森?」
私は2階を見上げる。ウマ君が戻って来て、二人分のジョッキを流しに運びながら頷いた。
「たまーに、虎さんがいきなり消えたら、大体は森に上がってるんですよ。本当に急に消えるから毎度驚きますけど」
「へえ?」
最近はなかったのになあ~、とぶつぶつ言うウマ君に食べ終わったお皿を渡す。
いきなり2階に上がって?・・・何してるんだろ。ほんと、読めないというか、何にせよ変わった人だ。2階の植物の世話も、好きだというだけあって全部一人でしているらしいし。