山神様にお願い
「今は・・・幸せですけど。来年になったら、自分達もうまくいかなくなるのかな、って」
彼の後ろ、壁の左上に飾られた「山神様」が見える。
その薄暗い場所を見詰めて、私は立ち上がった。
「シカさん?」
気ままな大学生活で出来たカップルは―――――――――就職の壁で木っ端微塵に。
「大丈夫よ」
私が出した声は暗い天井に上がっていく。
じっと山神様を見ていた。それからウマ君を振り返る。
「大丈夫よ、彼女が好きならね。・・・私達は・・・もう気持ちが薄れてしまったのかも」
遠くになってしまったのかも。だって、ずっと会ってないのに心も痛まないの。寂しい気持ちはどこへ行ってしまったのだろうか。
ウマ君は痛そうな顔をした。
「あの・・・すんません」
「いえ、大丈夫。暗くなってごめんね」
1階で、若い私達は、暗い顔をして落ち込んでいた。
2階で、年上の彼らはドタンバタンと盛大な音をたてて暴れていた。
・・・・あーあ、全く。