山神様にお願い


 私は彼の邪魔にならないようにとしすぎて、いないも同然の存在に自分からなっていたのかも、って。

 あの明るい男の子なら、逆の立場だったらきっとそうしてくれていただろうと思うのだ。

 私を連れ出して、力を抜けよって笑ってくれただろうって。
 
 そうやって、追い詰めていく自分を解放してくれていただろうって。

 私はそれを一度もしなかった。

 しなかったんだな。

 私は、ずっと家で待っていたのだ、彼からの連絡を。それだけだった。

「でも、お互いが悪かったのよ」

 付き合いや人間関係は、鏡なのだ。自分の行動が相手にうつる。確か、小学校の時の担任だってそう言っていたし。

 電話の向こうにそういう。眞子は騒ぐのをぴたりと止めた。暫く間をあけて、ゆっくりとした声が聞こえる。

『―――――――今、何してるの、あんた?大丈夫なの?メールが回ってきて、皆心配してる』

 え、それは一体何人が?ちょっとそう思ったけど、私は微笑んだ。電話を持って口角を上げた自分の姿が、夜に入りかけて光が反射しているコインランドリーの入口に映っている。

 有難いなあ~・・・友達、なんだな。嬉しいな、そう思ったのだ。


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