山神様にお願い
失敗した。
夜の8時過ぎには、私はそう思って頭を抱えていた。いやいや、訂正。ビールをやけになって煽っていた。
だからほとんどぐでんぐでんだった。
何故やけになったか!それは、今の現状は決して私が望んだものではなかったからだ。
「あははははは~!すっごーい!美味しいいいいい~!イケメンで作るご飯も美味しいなんて最強ですねえっ!!右田さんって仰いました?格好いいです~!!」
そう叫んでいるのは、眞子。ちなみに手には4杯目の生中を掲げている。
「あたしは店長さんが好みですう~!優しそうなところが、もう!結婚してらっしゃるんですかあ~!?」
こう叫んでいるのは、同じく大学の友達、千里。酒に弱くて男に強い彼女はウーロン茶でこのテンション。
「ちょっとこのお姉さん素敵いいい~!すっごい経験つんでるよ!あんた達も話聞きなさいよ、タメになるんだから~!」
と言って、ツルさんにべったりひっついているのは雪。名前を裏切る騒がしいおきゃんな娘で、ゼミでは有名だ。
もう、叱ることもできないよ。
私は壁に背をつけて、ため息を盛大に吐き出した。実際のところ、天井がちょっとばかり回っていた。
駅前に7時に集まったのは、この3人の女友達。急な話でもバイトや約束をキャンセルして集まってくれたことに、とにかく私は感動した。