山神様にお願い
だから、言われるがままに彼女達を「山神」へ案内してしまったのだ。新しいバイト先が見たいって言うから。
すると、日曜日だからか残念ながら暇だった山神は、他にお客さんが二人しかいなかった。それも常連さんのご夫婦で、私に「シカちゃんは今日は休み?」と声をかけて、早々に帰ってしまった。
そんなわけで、「ご飯行くならウチで飲まない?」と言う夕波店長の超オープンな笑顔に、女友達は全員でアッサリ頷いたのだ。
ほぼ貸切状態になった山神で、当たり前だけどうちの獣達が女子大生を放っておくわけがない。
すぐ、まず店長がのってきた。
「改めて、いらっしゃーい、鹿倉さんのお友達かな?」
入ってきた時の無造作な頭は、いつの間にか整えられていた。私はそれに気付いて、店長の作られた外見を凝視する。
すると目をキラキラさせた眞子のバカたれが「この子の失恋パーティーなんですう」とか言ったので、カウンターから龍さんが身を乗り出して、ウマ君やツルさんもわらわらと寄ってきて―――――――――
想像つくでしょ。つきますよねえ~・・・。他にちっともお客のこない居酒屋「山神」は、従業員込みで宴会状態になったってわけだ。
途中で夕波店長が、今日はもういいや~とかいいながらふらりと店の入口に行って、「本日貸切」の札を下げたらしい(ウマ君談)。