山神様にお願い


「ツルさん好きれす~!」

 私はツルさんの膝にドンと頭をのっけて、酔っ払いの図々しさで膝枕を奪っていた。

「らいじょーぶれすう~・・・ぜんぜーん泣けないんらもーん」

「シカさん、へべれけですね」

「そうね。まあ結構飲んだわよね。勘定は、彼女達に任せていいのかしらね」

 ウマ君とツルさんの会話が頭の上で聞こえる。

 ああー・・・酔った~・・・。こんなに飲んだの久しぶりだ。

 さっきの3人の嬌声に応えて、龍さんが「右田さんなんて言わずに龍さんって呼んでね~!」て言ってにっこり笑っただとか、店長が「俺は独身ですよ~。そんな嬉しいこといって、皆しっかり彼氏いるんでしょ?」などとか言ってウィンクした、だとかのムカつく場面はしっかりと見てしまったのだけど。

「まあ、人生色々あるから面白いわけだし。どうせあれよ、シカちゃん、春から新社会人になれば、会社が大変で恋愛どころじゃないと思うよ、多分ね。縁がなかったんだよ」

 ツルさんは私の頭を撫でながらそういう。ウマ君はちゃっかりご飯を食べながら頷いた。

「そうっすよね、やっぱり縁ですよね、最後は。続く人は続くんでしょうし」

「ウマ君は頑張って~。彼女が好きなら踏ん張るんだよ~」

「うす!」

 私はトロトロと眠りかけながら二人の会話を聞いていた。たまにうん、とか、はい、とか返事を返していたけど、実際のところ自分が何に返事をしていたのかが判っていなかったのだ。


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