山神様にお願い


 つい前につんのめって、わたわたと口を開いた。

「つ、つつつつつツルさあ~ん!!そこのとこ、もうーちょい詳しくお願いします!!」

 私の反応を見てカラカラと彼女は笑う。

「ああ、やっぱり知らなかったのね~。あははは~」

「いやいや、軽やかに笑ってる場合じゃないですよっ!どうして、一体なぜ、あんなちゃらんぽらんで軽薄でかなりおかしい人と付き合ったんですか!??」

 ツルさんが真顔で私を見た。そして、眉を下げて苦笑する。

「・・・シカちゃんは、龍さんに傾いているかと思ったんだけど、その台詞を聞いているとなさそうね」

「へっ!?龍さんに、かた・・・??ないないない、ないです!」

 驚きすぎで目が飛び出た挙句に零れ落ちるかと思った。

 どうしてそう思ったんですかああああ~!!ツルさああああ~ん!私がそう叫ぶと、いやいや、と彼女は手を振った。

「うちにくる子はとりあえず一度は龍さんに惚れるから、そうかなって」

 うちに来る子?!えーと、ああ、山神に雇われるバイトの女の子ってこと?私は首をぶんぶんと振る。

「いえ、ないです。私、小泉君がいたし・・・・」

 まあ、振られたけど。言葉は続かなかったけど、ツルさんは判った、と言う風に頷いた。

「まあ、シカちゃんは真面目だからねえ~。龍さんもどう攻めていいか考えあぐねていたみたいだし」


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