世界征服狂走論
「あれ、これ予鈴だよな?」
「そうだよ。ダイジョブチャイムだよ」
「……いつまで言ってんだよそれ」
夏の風に吹かれながらすこし笑って答えると、一瞬、目を丸くしたチカは照れたように顔をそむけた。
なんて分かりやすい。
かわいいなチカちゃん。
「1年のとき言ってたやつじゃん、それ」
「まだ席につかなくて大丈夫なダイジョブチャイム、って、チカちゃんがつくった言葉だよ?」
「俺じゃねえよ」
「チカちゃんだよ」
なつかしい、ふたりでつくった言葉とか。ほかにももっとあったはずなんだけどな。もう忘れちゃった。なんだっけな。いつ使わなくなったのかな。
いまあそこでサッカーしてる男の子たちくらいのときから、あたしたちこの学校に通ってるんだもん。
「3年だよ、3年。」
そりゃあ、いろいろ変わるわけだ。つまんない不満もうまれるわけだ。
お弁当を片づけながら、向かいで牛乳をすってるチカを見る。チカとも、3年間いっしょにいることになる。が。
「…まだなんかねらってんのかよ。もうなんも持ってねえよ」
「ねらってねえよ」
ホンットにこの子は、いつまでも変わらない子ね。
いつもいっしょにいるから変化に気づいてないだけなのかもしれないけど。