我が家の家庭事情


思ってること。


…………ないことも、ない。



「ほら、なんか思い当たることあるんでしょ」


「…………」


「言ってみれば?聞いてあげるよ、そろそろいい加減気持ち悪いんじゃない?
自分が何思ってるかわからなくて」


「…………私、秀人のそういうとこ、嫌い」


「藪から棒にひどくない?」


何なんだよいきなり…………。と、秀人は顔をしかめてブツブツ言う。

その様子がいつも通りで、安心しながらおかしかった。



「…………嫌な気分に、なるかもよ」


「…………」


「多分、聞いても楽しい話じゃないだろうし」


「いいよ。気分の悪い話なんて、聞き慣れてる」


一瞬だけ、顔を歪めた秀人。

そんな顔するくらい、普段嫌な話ばかり聞かされてるのかな。

やっぱり、8年の年月って長いんだ。

私、何も知らない。



「………秀人の言う通りだ。私、羨ましかったんだと思う」


口を開く。

〝羨ましい〟。その言葉が、しっとりと心に浸透する。

そうか、私は羨ましかったのか。



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