我が家の家庭事情
秀人は決して馬鹿じゃない。
いつも飄々としてて、馬鹿っぽくて、いじられキャラのくせして。
本当は誰よりも冷静で、大人びてて、人より一線引いたところで周りを見てる。
こういうとこが妙に老成してて、私は苦手に思う。
だからジジイなんて言われるんだよ。
「松島はただ俺らに嫉妬してただけなんだよ。可愛いね。女の子みたい」
「殺すぞ」
「ごめんて。怖い怖い。睨まないで」
本気でビビる秀人を横目に見ながら思う。
嫉妬、か。
悠斗の言うことも、何げにハズレじゃなかったな。
まぁ、竜にじゃなくて、3人ともにだけど。
「ごめん。つまらないことに悩んで、勝手に壁を作ってた。素直に仲良くなれなかったのは、知らないからじゃない。
ただ、決めつけて意固地になってただけだ」
「何で謝るの?別にフツーのことだと思うけど。あれだよね、自分の仲良い子が他の子と仲良くしてて気に入らないみたいな心理でしょ。自然なことだよ」
「……でも、3人は私の友達だから」
そう言うと、秀人はきょとんとしてから、嬉しそうに破顔した。
ああ、何だか。
もやもやが晴れていくような気がする。
「友達だから、こそのことだと思うけどね。どうでもいい人にそんなこと思わないでしょ?」
「うん」
「分かったら、もう遠慮するのはやめようね。友達なんだから。松島は、もっとワガママになりなよ。千尋みたいに」
「……今、十分ワガママだったから。しばらくはいい」
「控えめだなー」
くすくす笑う秀人。
もう老成した雰囲気は払拭していて、いつも通りの、明るい笑い声だった。