我が家の家庭事情
「…………さぁて、こんなもんかな。もういいんじゃない?」
「これ以上、どうもできないよね」
「うん。俺らは頑張った。後は自分でするべきだよ。掃除を人に任せるなんて、いい大人が恥ずかしい事だって、高木は自覚した方がいい」
掃除用具を片付けて、生物室の鍵を閉める。
秀人は人差し指に鍵をかけて回しながら歩く。
私はその隣を少し距離を開けて歩く。
「〝男女間の仲が続くなんてありえない〟ねぇ………。何でまたそんなかき混ぜるようなこと言うかね、悠斗は」
「え?」
まるで独り言のように呟かれた言葉は聞き取れなくて、思わず聞き返す。
「いいや、何でもない」
秀人はそう言ってちらりと私を見ると、首を傾げて微笑んだ。
「…………別に、俺はアリだと思うよ。男女間の友情」
「……」
「じゃないと、松島とも千尋とも、高校っきりって認めることになるし。
さすがにそれは寂しいよ」
「………うん」
「俺は生涯仲良くしたいよ。特にこの4人でね」
「……そうだね。私もそう思う」
私の言葉に、秀人はまた嬉しそうに笑った。
私に優しく微笑んでくれる秀人のように、私も微笑んだ。
(……そういえば、千尋は男女間の友情は絶対ないって)
(…………何でそう、台無しなこというかな。アイツは)
(千尋だからじゃない?)
(…………なるほど)