我が家の家庭事情




地味に、目立たず静かに。


俺のそんなささやかな願いは、たったの1週間で潰えてしまった。




*****




ガラッ



「あ、はよ!悠斗」


「おはよう、悠斗君!」





「…………おはよう」



肩からずり下がったエナメルバッグをかけ直し、多分しらけてる顔(多分無表情に近いけど)のまま席に着く。


あの日から、クラスの奴がやたらと俺にフレンドリーだ。

その日までは、挨拶こそすれ、積極的に話しかけてくることはなかった。




「なぁなぁ松島!数学のプリントやった?!
俺今日当んだ助けて!!」



前の席の男子、古賀の名前は奴が初登校してきた事で知った。

きっとそれがなかったら、一生覚える気なかったと思う。



「やったけど。合ってるかわかんないよ」


「全然!!やってることに意味があるんだよ」


「やったの俺だけどな」



こんな風に、話すことも。


それもこれも、全てはアイツのせいだ。




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