我が家の家庭事情
「せんせー、その子が噂の“転校生"ですかー」
「あ?どこで聞いたんだお前ら……」
松井は呆れたように聞いてきた千尋を見た。
「メンドくせーなー、オイ松島。自己紹介くらいテメーでやれ」
松井は心底めんどくさそうに言った。
何であんた教師になれたんだ。
テキトーすぎるだろう。
“転校生”は、一瞬嫌そうに顔をしかめた後、ため息をついて小さく口を開いた。
「………松島、舞華。よろしく」
━━━素っ気ない挨拶だった。
みんなその短さに呆気に取られていたが、
俺は違うことで唖然としていた。
「……松島舞華……?」
前の席の秀人も同じように呆然と彼女を見ている。
おそらく後ろの席の千尋も同じだろう。
『━━どうせ竜もあの子たちと同じなんでしょ』
俺はあの日と変わらない、澄んだ茶色の綺麗な瞳を見つめた。
「……舞華……」