我が家の家庭事情
ビックリしたのはこっちだよ。
気のせいなんかじゃなかった。こいつら間違いなく俺らに近付いて来てた。
つーか………目の前だし!
「ほらー。竜君も秀人も何固まっとるんよー。舞華やって、舞華!」
ギギギ、とロボットみたいに硬い動きで転校生━━舞華を見た。
8年ぶりに見た舞華は、あの頃の面影を微かに残したまま、別人のように大人びていた。
知ってるけど、知らない。
俺の知っている舞華は8歳の彼女であって、16歳の彼女じゃない。
俺の知らない彼女は、自分を見上げる俺と同じように、俺のことを見下ろしていた。
その顔は、何を考えてるか全く見当もつかない。
あの日、俺を見ていた瞳と同じように、
何も感情を読み取れない目で。
「……初めまして」
何も言えない俺に、また同じ言葉を呟くんだ。