我が家の家庭事情
「リュウのことは覚えてるよ」
「………?」
「でも、今の……あんな竜、私は知らない」
舞華は視線を落とし、睫毛を揺らした。
「秀人が泣き虫だったみたいに、私も昔は泣き虫だったな」
「……そうだね」
「私が泣いてるとあいつはいつも飛んできてくれたが……今は違うな」
秀人は意味が分からないといった顔だ。
「いつの何に怯えてるのか知らないが、昔のあいつは何にも怯まず私のところに来てくれた」
いつの、何に。
松島は知ってるんだ。竜が、葬式での一言をずっと気にしていることを。
「あいつ、あんなに小さい奴じゃなかったんだけどな」
ふっと目を閉じ微笑んだ。
「私は別にあいつが負い目を感じるほど気になんかしてない。
竜がしょうがなく言ったことだって分かってるしな」