我が家の家庭事情
せこい…………いや、我が弟ながら逞しく育ってくれたもんだ、と思った。
「んじゃ、終わりだ。掃除忘れんなよー!」
「きりーつ。礼」
立ち上がって頭を下げながらカバンを肩にかける。
礼儀もクソもないが皆そんなもんだ。
「舞華ー。暇そうだから秀人と竜君も誘っといたー」
「んー」
何気なく返事をしてから、え、と千尋を見る。
千尋は私の反応に気付かず竜と秀人に話しかけていた。
千尋にからかわれているのか、顔を赤くして怒る秀人と、それにケラケラ笑う竜。
身動ぎする度にサラリと揺れる、
茶色い前髪の向こうに見える細くなった瞳を食い入るように見つめていた私は、
竜と目が合ったことにハッと我に返り、さり気なく目を逸らした。
「 ? 舞華ー」
「今行く!」
じっと自分を見つめる視線から避けるように、
目を伏せながら歩みを進めた。
外村 竜。
私の幼稚園以前からの幼馴染みで、私の過去を知る数少ない友人だ。
母さんの葬式以来、ちょっとした仲違いですれ違って、この間再会したばかりだった。
こないだまでは、大して意識もしていなかったが、ここ最近は、ちょっと意識しすぎて気まずい。