我が家の家庭事情
最近多々あるこの瞬間が、私が竜に対して気まずいと思う原因だ。
唐突に真剣な顔になるもんだから、心の準備も合ったもんじゃない。
「…………竜?」
平静を装って尋ねるように首を傾げると、竜は一歩私に近付いた。
ドキッと胸が脈打つ。
い、いつもだったら呼んだら普通に戻るのに。
私の動揺する姿を見て、竜は目を細めると悩ましげな顔をした。
(…………心臓に悪い)
なまじ顔がいいもんだから、こんな顔でさえも様になる。
「ま────…………」
私の手に手を伸ばしながら、竜が名前を呼んだ。
固まって動けない私の手に、竜の手が触れようとしたその時。
「おや?舞姉と竜兄じゃん。一緒に帰ろー」
少しだけ私に似た、どこかふてぶてしい声が聞こえた。