我が家の家庭事情
「ところでさぁ」
いきなり変わった声音に、私は眉をひそめる。
さっきと変わらない気だるい口調。
でもさっきと違って、何と言うか、こう。
好奇心というか、下世話な色が見え見えだ。
「秀くんに聞いたけど、竜兄頑張ってるみたいじゃん。
舞姉アタックされまくりなんでしょ?
さっきみたいに」
「アタックて…………」
秀の奴め。悠斗に余計な吹聴を……。
絶対あいつ楽しんでる。
ジジくさいくせに変に無邪気なんだから。
内心舌打ちをしたい気持ちだ。
明日はパンでも奢ってもらおうか。
「別に、そういんじゃないだろ」
「え、そういうのって何?」
「…………ホントお前腹立つな」
また戻ってしまった話に、私はうんざりして深い溜め息をついた。
わざとらしく聞き返してくるなんて、性格の悪い奴だ。
「だから、アタックじゃないんだよ、あれは。私は竜に対してそんな気持ちないし、
竜だって今更そんな感情持ち合わせてる訳無いだろ」
「舞姉はそうでも竜兄は違うかもよ?
何たって男デスカラ」
「なにそれ」
下から覗き込んでニヤリと笑った悠斗に、私は呆れて目を細めた。
「今更じゃなくて、今だからだよ。
もう子供じゃないんだしさ。幼馴染みなんて、めちゃくちゃオイシイ関係じゃないですか」
「どうしたらそういう考えに行き着くんだ……」
ベタな少女マンガでも読んだのか。
桃色な妄想に頭やられてるじゃないか。