我が家の家庭事情
「竜は少しだけ特別な幼馴染みってだけだよ。
普通に好きだけど、恋愛的な意味で好きって訳じゃない」
「ふぅ〜ん……」
唇をむっと突き出して、悠斗は意味深な目線を向けてくる。
「何なんだよ、もう」
「いや、舞姉は馬鹿なんだなと思って?」
「数学30点に言われたくないんだけど」
「やだまだ怒ってんの? ノー勉で30点取ったら上等でしょ?
…………じゃなくて、俺は頭が馬鹿だって言ってるんじゃないよ」
「じゃ何だよ」
悠斗は大きな丸い瞳を見開いて、私を見上げた。
曇りのない澄んだ黒目に見つめられて、少しドキリとする。
「舞姉はどう思ってるのか知らないけど、
何もない男女の仲がいつまでも続くなんて有り得ないんだよ?」
「………………」
〝いつまでも続くなんて有り得ない〟
…………そうなんだろうか。
後2年もして、高校を卒業して。
大学に行くなり、就職するなり。
そうしたら、確実に会える時間は少なくなる。
そんな日が続いたら、竜は、私のことなんて忘れてしまうんだろうか。