Magician
ゴーン、ゴーン…。
正午を告げる、金色の大鐘が空を伝う。
響き渡る音と共に、仕事をしていた者は手を止めて、休憩の場へと足を運ぶ。
これからが仕事だと、張り切るレストランもあるだろう。
さらにいえば、食の取り合いとなる戦場も生まれる事は間違いが無い。
「だぁ!!一番のりだぁ!!」
「ま、待って!!これは私が先に触れたのよ!!」
と、聞き取れる声もあれば、混ざりに混ざって何を怒鳴っているのか、さっぱりわからない騒動もある。
そんな戦場は、とある学び舎の食堂の一角にある購買である。
誰もが一度はその言葉に惹かれ、一度は手にしたい『限定物』
一日に二十個、とは多く聞こえるかもしれないが、この学び舎は全校生徒千に達するほど多く、簡単には手に入らない代物と化している。
敷地面積もそれに劣らず、町ひとつ分は優々とある魔法学園《セイファリッド》の名物品なのだ。
とはいえ、そんな争いに参加はすることなく、持参の弁当を持って、そんな戦場とはかけ離れた場所で、一人大木の下で自然に触れる少年は、風の音に耳を傾け、陽の光を感じて、にこにこと笑みを浮べていた。
「今日もいい天気だねぇ…、絶好のお昼寝日和だよ」
ムニャムニャと、そして大きな欠伸をして、すでにごろんと寝る姿勢。
ぽかぽか陽気は、まるで魔法のように彼を夢の世界へと誘っている様子だ。
小柄、よりは少し大きいが、童顔でまだ幼い。
華奢な身体つきには、制服が若干大きいようで、上着もズボンも若干長いように見える。
このまったりとした時間は何よりのお気にの時間で、邪魔されるのを嫌うためにここに一人でいるわけだが、それ以外にも理由があったりする。
なにせこの少年、誰よりも成績が悪く、友達が全くいないのだ。