花のように
前回来た時に気になっていたミステリー小説を手に自分の席へ戻ろうとしていた私は、ライブラリーの中央にあるテーブルに目を留めた。
ふだんはお店の雰囲気に合わせて、季節のアレンジメントが飾ってあるその場所に、今日は一本ずつ丁寧にラッピングされた黄色いチューリップが、まるで大きな花束のようにして花瓶に生けてある。
黄色い花束を眺めていると、ふわりと芳しい珈琲の薫りが鼻を掠めた。
「はい、佳奈ちゃん。ブレンドお待ちどうさま」
「あ、ありがとうございます」
すると、私の視線に気づいたのか、真由美さんがこう続けた。