花のように

　彼……稜(ﾘｮｳ)ちゃんとはずっと一緒だった。


　父を亡くして、泣いてばかりいた私に、

｢寂しい時は、僕をお父さんの代わりにしていいよ｣

そう言ってくれたのは稜ちゃんだ。


｢よかったわね、美亜には稜ちゃんがいてくれて。そうしていると、本当の兄妹みたいだわ｣

　母は隣に住む稜ちゃんのことを、そう言っていつも褒めた。


　でも、私は稜ちゃんを父の代わりにしたことなんて一度もない。

　ましてや、兄だなんて、思ったこともない。


　もうずっと、稜ちゃんは私にとって男のひとだった。


　一生側にいたくて、愛しくてたまらないひと。

　彼だけが、私の世界の全てだった。