花のように


 一度でいい。たった一度だけでも、貴方が私を抱いてくれたら、私はそれを糧に生きていける。


「稜ちゃん……お願い」

 彼は私の願いを聞くと、辛そうに顔を歪めた。


『イヤ、言わないで』


「……ダメだよ、美亜」


『お願い、その言葉だけは稜ちゃんの口から聞きたくないの』


「美亜は、僕にとっては妹……みたいなものだから」


『呼ばないで、妹、だなんて』


「……ごめん、美亜」


 私の願いは、受け入れてもらえなかった。



< 23 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop