花のように


 もう、私の隣に稜ちゃんはいない。


 寂しいときにかしてくれた肩も、私を見つめる優しいまなざしも、二度と私のものになることはないのだ。


「ご結婚おめでとうございます。……お幸せに」

 礼儀正しく挨拶をして、長く続く列から離れようとしたそのとき、新婦の麻里絵さんが私に声をかけた。

「美亜ちゃん、これ……」

 そう言って差し出されたものに言葉を失った。


 麻里絵さんのために作られた、純白のブーケ。


 身体は……無理だったけれど、心だけは全部稜ちゃんのところに置いて来たから、私は一生その花束を手にすることはないだろう。

 そう思っていたのに、麻里絵さんはなんのためらいもなくブーケを私に手渡した。



< 24 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop