花のように
もう、私の隣に稜ちゃんはいない。
寂しいときにかしてくれた肩も、私を見つめる優しいまなざしも、二度と私のものになることはないのだ。
「ご結婚おめでとうございます。……お幸せに」
礼儀正しく挨拶をして、長く続く列から離れようとしたそのとき、新婦の麻里絵さんが私に声をかけた。
「美亜ちゃん、これ……」
そう言って差し出されたものに言葉を失った。
麻里絵さんのために作られた、純白のブーケ。
身体は……無理だったけれど、心だけは全部稜ちゃんのところに置いて来たから、私は一生その花束を手にすることはないだろう。
そう思っていたのに、麻里絵さんはなんのためらいもなくブーケを私に手渡した。