花のように


 彼は本当に優しい人だった。


 私と会う時は、薬指の指輪を外してくれたし、行為の間は決して名前を呼ばなかった。

 ……間違えて私を傷つけないように。


 優しい彼が大好きだった。
その優しさは、残酷すぎて、時に私を傷つけたけれども。


 ――結局、私の方から別れを告げた。


 どれだけ想っても未来が見えないこの恋から逃げ出したのは、私の方だ。



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