花のように


 気がつくと、駅に着いていた。


 きっと疲れているからだ。
こんなことばかり思い出すのは。


 混雑する週末の駅の中に、一際賑やかで、明るい場所を見つけた。


 あちこちの大きな駅に出店している花屋が、今日の咲き終わりの花を小さなブーケにして売っているのだ。

 なんとか今日中にブーケを売り切ろうと、店員たちが大きな声でエキナカを行き交う人々に呼びかけていた。

 ワンコインで買うことができるそれに、私は目を奪われた。


『…かわいいだろ、結みたいだと思って。』


 いつかの彼の声が脳裏に甦る。


 彼が私の部屋に飾ってくれた、ピンクのガーベラの小さなブーケ。
その色の暖かさに胸が小さく跳ねた。


 週末のお酒でもなく、親友との食事でもない。


 これだけが、きっと今夜の私を元気づけてくれる。



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