花のように
夏の章
鉄仙は似合わない
「……麻里絵、ねえ麻里絵!!」
ジャキッ……
強く名前を呼ばれてハッとした。……また、考えてしまっていた。
「あーあ、かわいそう。どうしたの、ぼーっとして。麻里絵らしくない」
大学からの友人で、私のフラワーアレンジメント教室のアシスタントをしている美咲が心配そうに私を覗き込んだ。
次のクラス用に準備していたラナンキュラスの茎を、花の根元からバッサリと切ってしまっていた。
「なによ、ひょっとして新婚ボケ? 稜さんのことでも考えてたんじゃないの?」
くすくす笑いながら美咲が言う。
「まさか」
鼻で笑い飛ばして、私は親友には決して話せない想いを飲み込んだ。
だって……言えるはずがない。結婚早々、夫の不貞を疑っているだなんて。