花のように
午後のクラスを無事終え、夕飯の買い物も済ませた私は、夕暮れの道を家へと急いだ。
誰が何と言おうと、これから私が帰る部屋が、稜の帰る場所だ。そのことを手放す気なんてない。
ふと、小さな花屋の店先に置かれたクレマチスの小さな鉢植えが目に入った。
濃紺に少しだけ朱が混じったようなその花は、私の好きな花だった。
買って帰ろうか……。
そんな想いが胸を掠める。
この花の蔦をいっぱい張り巡らせて、あの部屋に稜を閉じ込めてしまおうか。
初めて過る真っ黒な感情で、私の胸は埋め尽くされた。