俺ら参上ッッ!!

*玖白side*



「はぁ…」


あれから恋一から連絡が来ない。

『今日オレ学校休むわ!
わりぃな!』

そのメールから、1通も来なかった。


「もう7時か…
あいつ何やってんだろーな…」


プルルルル――

『おかけになった電話は、ただいま…』


ずっとこの調子だ。
電話にも出なかった。


「俺…何してるんだ」


あいつの恋はもちろん応援してる。
それは本心だ。
でも…


「俺は小さい頃から…あいつで頭いっぱいだ」


小さい頃に俺とひかりはすでに出会っていた。










――10年前


ひかりの家の近くの海で…俺達は出会った。

あの時ひかりは、1人で浜辺に座っていたのを覚えてる。


「ねぇ君、なにしてるのー??」

「え?
海を見てるの!」


キラキラした目で、初めて会ったのにすごく俺は惹き付けられた。


「海、私大好きなんだー!
ずっと見てても飽きないの!」


それは俺も一緒だった。
そういう共通点もあって、俺達は毎日この海で遊ぶようになった。

そしてある日、俺は引っ越すことになって、最後のお別れをしに行った。


「ふぇ…もう一緒に遊べないなんて嫌だよぉ…!」


ひかりは俺のために泣いてくれた。


「……俺も嫌だ。
だけど…行かなくちゃ」


あの時のひかりの顔、忘れない。


「うっ……ねぇ」

「なに?」


ひかりは涙をふきながら、カバンから何かを取り出した。


「…あげる」

「これ…」


ひかりがくれたのは手紙と…深い海の色をした石のネックレスだった。


「これね…お兄ちゃんからもらったやつなんだぁ。
海の底にある石でできたネックレスなんだって」

「これ…ほんとにもらっていいの?」

「うん、いいの!
思い出だもん!」


キラキラした笑顔は、海より眩しかった。


「うん…ありがとう」

「忘れないでね、私のこと…」

「もちろん!
絶対戻ってくるからな!」

「うん!」
















「……」


10年前の記憶…今も鮮明に覚えてる俺。

今さら…だと思うけど、俺はあの頃から…一回も気持ちが揺らいだことない。


「今でもあのもらったネックレス…してるよ、ひかり」


俺は手紙にひかりの名前が書いていたから覚えてるけど、ひかりには俺の名前は言わなかった。

だから覚えてるわけないよな…


俺は家の屋根に寝そべりながら、ひかりの事を思っていた。










< 17 / 98 >

この作品をシェア

pagetop