俺ら参上ッッ!!
*ひかりside*
いきなり恋一が倒れてからもう三時間。
私と玖白と美沙は保健室で恋一が起きるのを待っていた。
「んー……やめ、ろ…」
時々すごく苦しそうな恋一の寝言。
悪夢を見ているようだ。
恋一が汗をかいたら、その都度私は汗を拭き取った。
「ひかり…恋一また悪夢にうなされてるのか?」
「そうみたい…」
私にはどうすることもできない。
悔しくて、無意識に下唇を噛んでいた。
「あの双子なんなんだろうね、ほんと」
美沙は眉間にシワを寄せた。
恋一が悪夢にうなされてるのって…もしかしたら城条姉弟のことで…??
さっきまでの幸せな時間は嘘のように書き消されていた。
「……恋一、中学の時」
静まり返った空気に言葉を発したのは玖白。
「城条莉子と付き合っていたんだ」
え…
付き合って…た?
頭が混乱した。
そ、そりゃあ恋一イケメンだし優しいから彼女くらい…できるよ
私と違うんだから…
「恋一、中学の時は黒髪に眼鏡だったんだぞ?」
「えっ、そうなの!?」
そういえば…
眼鏡はわからないけど、一年生の時黒髪だった。
「意外だろ?
真面目だったんだよすごく。
中学一年の時までな。
いつの間にかコンタクトに変えて、それからモテるようになったんだ」
玖白は淡々と恋一の過去を語り始める。
「それで二年の冬に莉子と付き合い始めたのはいんだが…」
莉子ちゃんと付き合ってたと聞いているだけで胸がひどく痛んだ。
「あいつら姉弟は外国に三年から留学になって、恋一は莉子のこと好きじゃなかったから別れを切り出したんだ」
好きじゃなかった…??
さらに頭が混乱する。
「それで?」
「外国に莉子が行ってからも、恋一にメール、電話がいっぱいきて…恋一は嫌になっていった」
…恋一、大変だったんだ…
「莉子はいつか帰ってくるから、待っててって恋一に言ったらしいんだが…恋一は突き放した」
「うんうん」
「だけど莉子は聞かなくて、それで今帰ってきて…恋一に会いに来たんだと思う」
「……」
私は黙り込むしか出来なかった。
少し莉子ちゃんに悪いと思ってしまうくらい。
私が…莉子ちゃんから恋一を奪ったんだ…
「…ひかり。
言っておくが、お前は何も悪くないからな」
「へ…??」
玖白はふわっと笑った。
「確かに中学三年の時はまだ莉子を気にしていたみたいだが、高校入ってお前に出会ってから…お前しか見てないよ」
「……っ」
自然と涙が出る。
「恋一が莉子にきっぱり電話で言った言葉は、“今までにないくらい守ってやりたいと思うヤツができた”だぞ?」
「こう…いち…!!」
涙が止まらない。
そんなに前から恋一に愛されていたなんて知らなかった。
私だって…恋一が本当に好きだもん。
莉子ちゃんに負けない…!
そう思ったら自然と涙が止まった。
「あーんな感じ悪い女なんかにひかりは絶対負けないから!」
美沙は笑顔でそう言ってくれた。
「確かにそうだな。
前から莉子はやめておけと俺は言ってたのに、付き合ったのはこの馬鹿恋一だからな」
フッと玖白は笑った。
二人は私を励ましてくれてる。
その心がとても胸に染みる。
「好きでもない莉子と恋一は付き合って…馬鹿だ。
あの頃は弱かったのかもな、恋一」
少し遠い目で恋一を見る玖白。
え…?
どういうこと?
そう思った時、恋一がゆっくり目を開けた。