俺ら参上ッッ!!

*恋一side*



ひかりが走り出した時、引き留めようと思って起き上がったら、ひどく頭痛がして結局追いかけられなかった。


「オレ…情けねぇ…」


ふと窓の外を見ると、あのイヤな青空だった。


「クッソ…
またお前かよ…」


青空との縁は切れたと思っていた。
最近ひかりと一緒にいる日は青空が多かったし、幸せだったから。
甘かった。


「お前はいつまでオレにつきまとうんだよ…」


青空に話しかけた。
だけど返答なんて当たり前になく、ただ燦々と晴れている。


「……はぁ」


ため息をついたら幸せが逃げるというけど、ほんとそうなのかもしれない。
そんな事を思っていた時だった。

ガラガラ

保健室の扉が開いた。
オレが真っ先に思い浮かんだのは…


「ひかり!?」

「…悪かったね、ひかりちゃんじゃなくて」


オレが望んでいたひかりじゃなく、莉子だった。


「莉子…お前帰ったんじゃねーのかよ」

「まだ帰ってないよー
だからここにいるんじゃない」


莉子はオレの寝ているベットの隣にあるイスに座った。
さっきひかりが座っていた場所だ。


「何しに来たんだよ…」

「…ちょっと話したいと思って」


いつになく真剣な莉子の目にオレは少し驚いた。

オレも…逃げちゃダメだよな。
うやむやにしたからひかりを傷つけた。


「あたしね、恋一が言う“守りたい子”ってどんな人かと思って確かめたかったの」

「……」

「そしたら、ひ弱そうで引っ込み思案みたいだし、恋一にすがって…幻滅した」

「は?」


いきなりオレの身体の血が昇る。


「全然恋一にふさわしくない!
あたしのが恋一を知ってるし。
あんな子に恋一をとられるなんて考えられない」


さっきら散々ひかりの悪口言いやがって…!!


「…おい莉子」

「なぁに?」

「知ったような口聞くな」


オレの怒りは最高潮に達していた。


「お前こそひかりの何がわかるんだよ。
ひかりは変わろうと努力する強いヤツだ。
真面目で…でも抜けてるとこもあって、だけど思いやりがある。
それに、オレのことを自分のことのように考えてくれる…そんなヤツなんだよ」


冷静になっていた。
でも怒りはおさまらない。
ひかりを侮辱されるのは一番オレがキライなことだから。


「あ、あたしだって恋一のこと…!!」

「お前はいつも最初に来るのは自分のことだ」

「っ!!」


莉子はバツの悪そうな顔をした。


「お前は自分のことしか考えてない。
前から…周りも聖のことも利用して…自分が手に入れたいモノはすべて手に入れようとする」


この性格を知ったのは付き合い始めてからだ。


「なにが悪いの!?
自分の手に入れたいものを手に入れるために、他のやつらを利用して悪いの!?」


コイツ…開き直ってやがる…

もう怒りというよりは呆れる。
謝罪の気持ちもまったくなくなった。


「……そこまで成り下がったんだな、莉子
残念だよ」


そう言ってベットから起き上がってひかりを探しに行こうとした時だった。


「…ひかりちゃん、今頃聖とどうなってるんだろうね?」


その言葉を理解するのに数十秒かかった。





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