俺ら参上ッッ!!

*ひかりside*



「恋一ぃ〜っ
キスして?」

「ん、いいよ」

「やった〜♪
大好きっ」

「オレも大好きだよ」


……嫌
恋一に触れないで…!!
嫌っ!!!!


「っ!!」


夢…か…

勢いよく起きると、見知らぬ場所のベットに寝ていた。

どこだろここ…
学校じゃないし…私の家でもない

部屋をキョロキョロしていたら、ドアの外から声が聞こえた。


「姉さん、飲み物持ってきてくれねーか?」

「いいけど…あんた大丈夫なの?」

「え?何が?」


聞いたことがある声と、聞いたことがない声が入り交じる。


「恋一が女の子連れてきたことないじゃない
びっくりしちゃった!」

「あー…まぁな」


今、恋一って…


「何があったか知らないけど、ちゃんと側にいてやんな?」

「オレ…は…」


よく部屋を見渡すと、バスケットボールがあったりして、すごく落ち着いた男の人の部屋だ。

あ…あれもしかして…!

ふとコルクボードに貼ってある写真が目に入った。
側に行ってみたら、恋一と玖白のツーショット写真がいっぱいあった。
もう1つは、綺麗な女の人の写真。
莉子ちゃんじゃないけど、少しモヤモヤした。

ガチャ


「っ!」


部屋に誰か入ってきたと思ったら、飲み物を持って立っている恋一だった。


「あ、ひかり…起きてたのか」

「こう…いち…」


少し足がすくんでしまった。


「飲み物持ってきたから…座れよ」

「……」


よくわからないまま、テーブルの側に二人で座った。


「ねぇ恋一…
なんで恋一がここに…??」

「あ、あぁ…わりぃ
お前気ぃ失ってたから家に連れて帰ろうと思ったんだけど、鍵ないの忘れてて…オレん家に連れてきた」


あぁ…そういうことか。

謎が1つ解けた。


「じゃあ…あの写真の人は?」


コルクボードを指差した。
恋一は少し笑った。


「あー、それオレの姉さん!
…まぁいとこだ!」

「そ、そうなの!?」

「オレ父さんと母さん死んだ後、姉さん一人暮らししてるから引き取ってもらったんだよ
昔から姉さんとは仲良かったからさ」


一人っ子だから、お姉さんがいるの嬉しいんだね…良かった。


「ひかり…オレに興味まだ持ってくれてるんだな」

「え?」


恋一の言ってる意味がわからなかった。


「オレてっきり嫌われたのかと思ってさ…」

「……」


嫌いじゃないよ!って言いたいのに言えない。
なんで?
きっと…莉子ちゃんが引っかかってるんだ。


「…ひかり?」


恋一が私の顔を覗きこむ。

やっぱり恋一が好きじゃなくたって…莉子ちゃんの気持ちだってある。
それに私、莉子ちゃんより恋一のこと何も知らない。


「ねぇ恋一…」

「ん…??」

「恋一は…私といて幸せだった…?」


なるべく声が震えないように…涙が出ないように我慢した。


「何言ってんだひかり…」

「私はすごく幸せだった
恋一は優しいから…莉子ちゃんともうまくやれるよ」

「!」


いくら我慢しても声が震えた。
涙も出てくる。

自分で言ったことなのに…なんで涙なんて出てくるの…


「なんで泣くんだよ…
なんで…そんなこと言うんだよ…!」

「ごめんなさい…ごめんなさい…!!」


ひたすら謝るしかできなくて、涙がどんどん込み上げる。


「……別れよう、恋一…」


部屋は驚くほど静かだ。
時が止まったみたいに。


「ひか…り…」

「この指輪は…莉子ちゃんに渡してね…?」


そう言って、左手の薬指にはめてあった指輪をテーブルの上に置いた。


「おい…ひかり!」

「それじゃあね…」


そう言ってドアノブに手をかけた時。


「ひかり!聞けって!」

「っ!?」


恋一に腕をおもいっきり掴まれた。






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