俺ら参上ッッ!!


「ほら、9月になったから最近ちょっとだけ寒くなってきたろ?
ここに長くいたら風邪引くよ」


ニコッと笑う聖くん。
前みたいなイラつきはなくなって、なぜか私の胸に染みた。


「なんで…
なんで私のこと探したりなんかするの…」

「それは…」


聖くんは黙りこんだ。

同情ならいらない。
また私が惨めになるだけ…

そう思っていた時、聖くんが口を開いた。


「俺はただ…ひかりちゃんを守りたいだけ
側にいたいだけだよ」

「……っ」


恋一が言った言葉と似ていて、つい重ねてしまった。
私はすがるように聖くんに抱きついて泣いた。


「ひかりちゃん…」


聖くんは私を受け止めるように頭を撫でてくれた。
そんな温もりに身を委ねた。


「私っ…恋一のこと…好き、なのにっ…」

「……」


ただ黙って聞いてくれる聖くん。
抱きしめる力が少しだけ強くなった。
そこには恋一の匂いも温もりもない。
あるのは聖くんの匂いと温もり。


「ひかりちゃん…
俺じゃ…だめかな」

「え…??」


私は顔を上げた。

聖くん…今なんて…


「最初は代わりでもいい…
だから…俺じゃだめ?」

「聖、くん…」


真剣な瞳に目を奪われる。

だけど私は…


「代わりなんて…できないよ
それにそんなことしたら、聖くんが傷つくだけ」

「そんなの知ってる
でも…俺はひかりちゃんの側にいたい」


揺るがない聖くんの瞳は真っ直ぐすぎて直視できなくなった。


「私には…恋一しかいないの」


思ってることを言った。


「なら…なんで離れたりするんだよ
なんで莉子に恋一を渡そうとするのさ」

「……」


それもそうだ。
ほんとに自分で何がしたいのかわからなかった。


「俺はこんなに傷ついてるひかりちゃんをもう見たくないし…
恋一も許せない」

「恋一は、関係ない…よ
私が…」

「なんでひかりちゃんが自分を責める?
悪いのは恋一だろ」


何も言えなくなって、うつむくしかできなくなった。


「俺は…恋一からひかりちゃんを奪うよ」

「!?」


聖くんの真剣な瞳は嘘ではないことを教える。

私…どうしたらいいの…







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