俺ら参上ッッ!!
「今のお前にはこれくらいが必要だろう」
倒れた恋一を冷たい目で見下す玖白。
やりすぎな気もするけど、きっと私だってしてたかもしれない。
代理で怒りをぶつけてくれた玖白に心で感謝をした。
「……関係ねーじゃねーかよ」
「あ?」
ゆらゆらと恋一が立ち上がる。
「オレとひかりは別れたんだ。
誰と付き合おうがオレの勝手だろ?」
ケロッとした顔で言う恋一。
腹が立ったけど、恋一の言う通りだ。
別れを告げたのは私。
何も言えない。
だけど今の恋一の言葉はあまりにもひどかった。
「……お前、もう一発くらいたいのか」
拳を構える玖白を私は止めた。
「い、いいの玖白!
もう殴っちゃだめだから!!」
「なんでだよ!
ひかりは悔しくないのか!
腹立たないのか!」
必死になってくれる友達がいるだけで…私は十分だよ。
「いいの…
私、恋一嫌いだから」
「ひかり…」
玖白は拳をおさめてくれた。
「こんなヤツだと思わなかったよ。
ひかり、別れて正解だぜ?」
「そうだよ!
恋一幻滅した!」
「……俺も悪いが、今の恋一の面は見たくない」
私は無言のまま、歩いて行く三人の後を追った。
気のせいかもしれないけど、恋一が悲しそうな顔をしていた気がした。
教室に行くと、クラスのみんなが私を慰めてくれた。
みんな…ありがとう…
少し涙目になりながら席へ向かったら、そこには…
「…え!?
ひ、聖くん!?」
「おはよ、ひかりちゃん」
恋一の席に聖くんが座っていた。
いつもの笑顔で私を出迎えた。
「何で聖がここにいるんだ」
「あ、玖白
話聞いてなかった?先生から」
不思議そうな顔をする玖白。
「俺ここのクラスなんだ。
恋一は莉子と同じクラスになったんだよ」
「え!?」
思わず声が出た。
確かに恋一がここにいたらすごく気まずいけど…
それとこれとはまた違う気が…!
「あぁ、その件か…知ってる。
今日朝にいろいろあったもんで、すっかり飛んでた」
「ははは、いいよ
…恋一、結構敵作っちゃったよね」
遠い目で窓の外を見る聖くん。
外は嫌なくらい晴れていた。
「いいんだあいつは。
もう俺は何も言うことはない」
「邪魔者が消えてくれて、俺的にも楽になったかな」
ニッコリ笑いながら言う聖くんは少し怖かった。
あ、あはは…
意外とすごいこと言ってる気がするんだけど…
「とりあえず、よろしくね?
ひかりちゃん」
「う、うん!」
なんだかいろいろ大変だけど、私には仲間がいる。
だから私は頑張れるはずだ。
弱気になんてなってられない。
「玖白」
「ん?
どうしたひかり」
「恋一に怒ってくれて…ありがと」
私がそう言うと、玖白は少し驚いた顔をした後にふわっと笑った。
「当然だろ?
友達…いや、親友だろ。
許せなかったしな」
「うん…だからありがと」
親友と呼んでくれる玖白に感謝ばかりした。
私には玖白も美沙も雅哉も秋斗も龍進も…聖くんもいる。
それじゃあ恋一は?
ふと考えてみたら、恋一は一人な気がした。
莉子ちゃんがいるけど、あの時の悲しい顔が頭をよぎる。
恋一…
別れたのに、私の心にはどこかに恋一がいた。
そんなことを思いながら窓の外を見ていたら、
「……」
「……ん?」
ふと視線がした。
視線を感じた先には恋一がいた。
こ、恋一…!
反射的に席を立った。
だけどその瞬間、恋一はどこかに行ってしまった。
間違えるはずない…
恋一だった…
恋一が何を思っているかわからないまま、時間ばかりが過ぎていった。