俺ら参上ッッ!!
ほんとの気持ちッッ!!
*恋一side*
ひかりを遠くから見ては虚しくなって…それが毎日だった。
気づいたらもう10月に入っていた。
あの時、何でオレはあんなにひどいことを言ったんだろう。
莉子と付き合っているのは嘘だ。
もうあたし達付き合ってるよね?といつも莉子に言われるけど、何も言葉は返せない。
きっとあの時オレが誰と付き合っても勝手だと言ったのは、ひかりの望みを叶えるのと…ひかりを試したかったんだ。
「……」
あれから1ヶ月、オレは1日も笑ってない。
玖白とは同じ生徒会だから話すことはあっても、美沙と雅哉さんとは話していない。
オレは莉子を取って…いろんなものを無くした。
莉子のせいではない。
オレが全部悪いんだ。
そうやってあれから自分を責める毎日だ。
「恋人も…友達も…
笑顔まで…オレは失った」
1人授業をサボって屋上で寝転がりながらタバコを吸う。
「そういや…最近タバコの本数も増えてる気がする」
確実にオレは追い込まれていた。
自分で撒いた種なのに。
「…ひかり…」
毎日頭に浮かぶのはひかりのことばかり。
莉子と一緒に登校してる時も、帰る時も、飯を一緒に食ってる時ですら。
「ひかり…好きだっ…!!」
いつのまにか溢れる涙。
離れて気づくオレの中でのひかりの大きさ。
今さら気づいたってもう遅いんだよ…
そう思っていた時、曇っていた空から雨が降り始めた。
「今日は…雨か…」
まるでオレの心の雨みたいだった。
雨が降っているにも関わらず、この場から動きたくなかった。
「たまには…濡れてもいいか」
目を瞑る。
オレはあっという間に全身びしょ濡れになった。
張り切っていつも頑張ってる髪すら、今はどうでもいい。
「……冷てー」
そうオレが呟いた時、いきなり雨が顔に当たらなくなった。
なんだ…??
ゆっくり目を開けると、ここにいるはずもない…オレが望んでいた人が傘を差していた。
「ひか、り…」
「……」
ただ黙ってオレを見つめるひかりの瞳は、今まで見たことないくらい悲しい瞳だった。
「こんな所にいたら濡れちゃうよ…って、もう濡れちゃってるね」
弱そうに笑うひかり。
ひかりはオレにタオルを差し出した。
びっくりしながらも、オレはタオルを受け取って顔を拭く。
「なんでひかりがここにいるんだよ…」
「ふと外見てたら恋一が屋上にいるのが見えて、雨が降っても来る様子がなかったから…つい」
ついってお前…
そういえばひかりと話すのは1ヶ月ぶりだ。
こんな最低なオレをひかりは気遣ってくれた。
「…バカじゃねーの」
「うん…自分でもばかだと思う」
そう言ってひかりはオレの隣にしゃがんだ。
雨はさっきより強さが増す。
「反射的に身体が動いて、気づいたらここにいたんだもん…」
何も言葉が出ないけど、久しぶりのひかりの声にオレはドキドキしていた。
こんな状況なのに、ひかりを抱きしめたくてたまらない。
「サンキュー…な」
「うん…ごめんなさい」
謝らなくてもいんだよ…
ほんとはそう言いたい。
だけど言ったらオレの気持ちがバレて、ひかりの望む結果にならない。
胸がズキズキ痛むのを押さえて、必死に我慢した。
「それじゃあ私…行くね」
そう言ってひかりは傘を置いて立ち上がった。
行くな!
ひかり行くな!!
心の中で叫んだって届くはずがない。
ひかりはだんだん離れていく。
「オレ…何してんだ!」
離れていくひかりのもとへ走って腕を掴んだ。
自分でもほんとにバカだと思う。
でも抑えられなかった。
「恋一…」
「……行くな、ひかり」
言ってはいけない言葉を言ってしまった。
だけど後戻りはできない。
「行かないでくれ…」
思わずオレはひかりを後ろから抱きしめた。
傘を置いてきたから、雨が冷たくオレ達にあたる。
「はな…して…!」
「……」
あまりにも弱いひかりの言葉と声。
抵抗なんて全然していなかった。
オレ…期待していいのかよ…
さらに抱きしめる力を強くする。
「なんでこんなこと…するの」
「じゃあなんで抵抗しねーんだよ…」
ひかりは黙った。
ダメだ…これ以上は…!
オレから身体を離した。
「わりぃ…
濡れてるけど、これ着とけよ」
そう言ってオレのびしょ濡れの上着を渡した。
これで少しは寒くねーだろ…
オレの精一杯の気遣いだった。
そのままオレは屋上を後にして、家に真っ直ぐ帰った。
莉子から<恋一どうしたの!?>とメールが来たけど、無視した。