俺ら参上ッッ!!
-体育館-
体育館へ着いたら、一年生や二年生がもうすでに来ていた。
早いなぁ…
恋一が10分でって言ってたからかも。
いつもの全校集会と違って、みんなバラバラに立っていた。
先生は1人もいないみたい。
「静粛に!」
玖白が壇上のマイクに向かってそう言った。
体育館はしんと静まりかえる。
「さて、今年の一大イベントを発表する」
みんなはキャーキャー騒いでいた。
私もワクワクしている。
「恋一、資料配れ」
「はいよー!」
壇上の影からひょこっと恋一が出てきた。
最近の恋一と全然違って、前と同じ。
私が好きになった恋一。
「おんもい!」
山積みになった資料を1人1人配る恋一。
だんだん恋一が近くなる。
「はいよ、ひかり!」
「あ、うん…ありがと」
普通に話しかけてくれた。
どうしたんだろう、いきなり…
胸の高鳴りがおさまらなかった。
「みんなわたったか?
それじゃあ説明を始める」
資料を見てみると、大きく“ウェディングイベント”と書いていた。
う、ウェディング!?
玖白が説明を読み上げる。
女の子にとってはまるで夢のようなイベントだ。
「ひかり、ワタシ出られないよー」
「あ、そっか〜…」
美沙は玖白と付き合っているから、このイベントには出られない。
私は出れるのか…
でも、恋一出れないんだよね…って、え?
私は目を疑った。
「尚、副会長の宮内恋一は参加を許可する」
そう玖白が読み上げた。
なんで恋一が参加できるの!?
「納得できないんだけど!!
あたしと恋一付き合ってるんだよ!?」
一斉にある人に視線が集まる。
莉子ちゃんだ。
すごく不服そうな顔をしていた。
「俺が決めたことだ。
口出し無用だ」
玖白…いったい何を考えてるの?
「じゃああたしも参加させて!」
「だめだ。
お前は参加権利がない、以上だ」
「なんで!!」
なんでなんだろう…
そう考えていた時、美沙が莉子ちゃんのそばに行った。
み、美沙!?
「邪魔しないで、恋一の。
アンタは関係ないんだから」
「関係大有りじゃない!
あたし恋一の彼女だもの!」
「はぁ…アンタまだ気づかないわけ?」
呆れた顔をする美沙。
みんなは静かに二人のやりとりを聞く。
私は身体がまったく動かなくて、ただ見ていることしかできなかった。
「恋一がアンタのこと好きなわけないじゃない。
ひかりが好きなの、わかる?」
「…そ、そんなことないわ!」
え…
うそ…でしょ…
ふと恋一に視線を移すと、目が合った。
恋一は柔らかく微笑んで、“わりぃな”と言った。
莉子ちゃんには悪いけど、私はやっぱり恋一が好き。
恋一がそばにいないと…嫌。
「美沙先輩の言う通りだ!」
「副会長はひかり先輩のだ!」
「二人が一番合ってるの!」
周りのみんなが莉子ちゃんに抗議する。
それがすごく嬉しかった。
莉子ちゃんは耐えきれなくなって泣き崩れた。
「アンタに味方なんかいない!
みんなはひかりの味方なの!!」
美沙がそう言った瞬間、隣にいた聖くんが動いた。
「そんなことない…
俺が莉子の味方だ」
莉子ちゃんの肩を抱いて、聖くんは美沙を睨んだ。
「聖…」
「莉子は純粋に恋一が好きなだけなんだ。
だから…あんまりいじめないでくれ」
悲しそうな顔で言う聖くん。
二人の絆がわかった。
聖くんは莉子ちゃんと一緒に体育館を後にした。
みんなはざわざわしている。
「なんなの…
姉弟だからってあそこは庇わなくたっていいじゃない」
ふてくされながら私の元に戻ってきた美沙。
言い足りないみたいだ。
「ありがとう美沙…」
「当然!
恋一もやっとわかったみたいだからね」
わかった…??
美沙の言ってる意味がよくわからなかった。
恋一は少しスッキリしたような罪悪感があるような顔をしていた。
――
「聖…別にいいのに…」
「いいんだ。
俺は…どんなことがあったって莉子の味方なんだから」
「ありがとう…」
「でも、残念だな」
「なにが…??」
「あの二人の絆は…愛は、裂けそうにない
俺の入る隙間なんてないよ」
「あたしもほんとそう思った」
「諦めるのか?」
「あたしは…うん、諦める。
聖は?」
「俺は…フラれるまで諦めないよ」
「そこまで好きなんだ…
初めてじゃない、聖」
「そうだな…
俺も自分でびっくりしてるよ」
「頑張りなさい…
応援してるから」
「ありがとう、莉子」