俺ら参上ッッ!!
「恋一…ひかりちゃんとヨリ戻したの?」
「いいや、戻してない」
「え!?」
莉子ちゃんはすごく驚いた様子だったけど、それ以上に私が驚いた。
やっぱり…恋一は…
不安になりかけて手を離そうとしたら、恋一が許してくれなかった。
「オレらはまだ付き合ってない。
あんなにひどいことして、すぐ戻れるなんて思ってないから」
恋一…
真剣な瞳には前みたいな曇りはなかった。
「文化祭のウェディングイベントでオレがひかりのネクタイを取ったら、また告白するつもりだ」
「恋一…」
すごく胸が熱くなる。
嬉しくてたまらなかった。
ほんとは今すぐだっていい。
だけど恋一の決心をねじ曲げちゃいけない。
「ふーん…
じゃあ、それは俺がさせない」
「なんだと…!」
恋一の前に聖くんが立つ。
見えない火花が二人の間に飛び散っていた。
「俺はひかりちゃんがいくら恋一に気持ちがいっても諦めない。
俺も本気でひかりちゃんが好きだから」
「……」
「だから、ネクタイは俺が奪う。
恋一が負けたら、ひかりちゃんは俺が頂く」
そう言って背を向けて歩いて行った。
聖くんの言葉もすごく衝撃的で、何が起きているのかわからなくなった。
「クソ…聖のヤツ…」
手の握る力が強くなる。
「ここまで来ても…邪魔はいるのか」
怒りが一変して、悲しい顔になる。
私は恋一の腕に自分の腕を絡ませた。
「ひかり…??」
「心配しないで…恋一
私は恋一を信じてる。
恋一しか見てないから」
そう言うと、恋一はおもいっきり私を抱きしめた。
「サンキュ…ひかり
めちゃくちゃ元気出たわ…」
「うん…
私も…恋一のネクタイ取れるように頑張る」
「おう…」
やっぱり細くなった恋一の身体。
いつもの恋一の匂いは、タバコの匂いが強くなっていた。
「ねぇ恋一…
最近痩せたでしょ?」
「え!?」
恋一はびっくりして身体を離した。
「なんでわかったんだ!?」
「抱きしめてる感じで…
あとタバコも本数増えたりとかした?」
恋一はこれぞ開いた口が塞がらない状態になっていた。
「な、なんかひかりこえーぞ…
見透かされてるみたいだ」
「やっぱり…」
予想は当たった。
でも、健康的ではないことは確かだ。
「恋一どうしたの?」
「あぁ…その…
ひかりが側にいないストレスで、食欲なくなるわ本数増えるわで最悪だったんだ」
頭をかきながらそう言った。
そう…だったんだね
怒らなくちゃいけないし、心配しなくちゃいけないけど、私のことを考えてくれていたことに嬉しさが込み上げる。
「そう言うひかりだって痩せたんじゃないか?」
「え!?
なんでわかったの!?」
恋一が大声で笑う。
「さては、オレとおんなじ理由か?」
「う……はい、そうです」
「かわいいな、ひかりは」
うわ…//
優しく撫でられる。
改めて距離が近くなった恋一にドキドキする。
「あ、ねぇ恋一!」
「ん?」
「今日私の家でご飯食べていかない?
龍進に栄養あるメニュー考えてもらうから!」
恋一がすごくキラキラした目になる。
「マジで!?
オレ龍進さんの飯大好きなんだよ!!
行く行く!」
「決まりっ!
行こ!」
再び手を繋いで、帰り道を歩幅を合わせて歩く。
まだ付き合ってなくたって…一緒にいれる時間が戻ってきてくれたから、それで今は十分。
そういえば恋一、ずっとブレスレットと指輪つけてる…
恋一はいつも考えていてくれたんだね。
真実を知って、私は改めて恋一が好きになる。
辛いことがあったけど、今こうして乗り越えられた…
だから、何も怖くない。